用語・基礎の解説
許容電流とは?電線サイズ・ブレーカーの選び方と電圧降下を分かりやすく解説
目次
1.許容電流とは何か
許容電流とは、電線やケーブルに電流を流したとき、導体や絶縁物が過度に温度上昇しない範囲で流すことができる電流の目安です。
電線に電流が流れると、電線が持っている抵抗によって熱が発生します。
例えば、細い電線に大きな電流を流し続けると電線の温度が上昇します。温度が上がりすぎると電線を覆っている絶縁物が劣化し、最悪の場合には漏電や短絡、火災につながる可能性があります。
そのため電気工事では、
「この負荷には何A流れるのか?」
だけではなく、
「使用する電線は、その電流を安全に流すことができるのか?」
を確認する必要があります。
このときに重要になるのが「許容電流」です。
許容電流=その電線に安全に流すことのできる電流
と覚えておくと分かりやすいでしょう。

ただし、許容電流は「電線の太さ」だけで決まるわけではありません。
同じ太さの電線でも、
- 電線やケーブルの種類
- 配線方法
- 周囲温度
- 同じ管の中に入っている電線の本数
- 電線をまとめて施工しているか
などによって放熱条件が変わるため、適用できる許容電流も変わります。
そのため、
「5.5mm²なら必ず○○Aまで流せる」
というように、電線サイズと電流値だけを暗記するのではなく、施工条件とセットで考えることが大切です。
2.まず電線選定までの全体像を理解しよう
許容電流だけを単独で覚えるよりも、電気設備を設計するときの流れの中で理解すると分かりやすくなります。
基本的な流れは次のようになります。
① 負荷を把握する
↓
② 設計電流を求める
↓
③ ブレーカーを選定する
↓
④ 電線・ケーブルの種類を決める
↓
⑤ 許容電流を確認して電線サイズを選定する
↓
⑥ 電圧降下を計算する
↓
⑦ 短絡保護・遮断容量・漏電保護・接地などを確認する
つまり、
負荷 → ブレーカー → 電線 → 電圧降下
という一連の流れとして考えることが重要です。

3.STEP1 負荷を把握する
最初に確認するのは「どのくらい電気を使う設備なのか」です。
例えば、
100V・2,000W
の電熱器があったとします。
単純な抵抗負荷として考えると、
電流 I = 電力 P ÷ 電圧 V
なので、
2,000W ÷ 100V = 20A
となります。
つまり、この機器には約20Aの電流が流れることになります。
ただし、すべての設備がこのように単純計算できるわけではありません。
三相負荷やモーターでは、
- 力率
- 効率
- 始動電流
なども関係します。
そのため、実際の設計では機器の銘板やメーカー仕様書に記載されている定格電流なども確認します。
4.STEP2 ブレーカーを選定する
負荷に流れる電流が分かったら、次にブレーカーを検討します。
ブレーカーには、異常な過電流が流れたときに回路を遮断し、電線や設備を保護する役割があります。
ここで初心者の方に覚えてほしいのが「負荷電流」「ブレーカー」「電線の許容電流」の3つの関係です。
例えば、
負荷電流:25A
ブレーカー:30A
電線の許容電流:35A
だったとします。
この場合、
25A ≦ 30A ≦ 35A
という関係になります。

つまり、
「通常使用する25Aは流すことができる」
「異常な電流が流れた場合には30Aのブレーカーで保護する」
「そのブレーカーに対して、電線側にも必要な許容電流がある」
という関係になります。
ただし、この考え方は基本を理解するためのものです。
実際には、幹線・分岐回路・電動機回路などによってブレーカーや電線の選定条件が異なります。
特にモーターは始動時に大きな電流が流れるため、「負荷電流が25Aだから30Aブレーカー」という単純な選び方ができない場合があります。
5.STEP3 許容電流から電線サイズを選ぶ
ブレーカーの候補が決まったら、次に電線サイズを選定します。
ここで許容電流を確認します。
ただし、「30Aブレーカーだから30A以上流せる電線を探そう」だけでは不十分です。
まず、どの電線を、どのように施工するのかを確認します。
例えば電線・ケーブルには、
- VVF
- IV
- CV
- CVT
など、さまざまな種類があります。
さらに施工方法にも、
- 配管の中に入れる
- ケーブルラックに施工する
- 複数の電線をまとめて施工する
など、さまざまな条件があります。
なぜ施工方法まで確認する必要があるのでしょうか。
理由は「熱」です。
電線に電流が流れると熱が発生します。
周囲に十分放熱できる状態なら温度は上がりにくくなります。
一方、多数の電線が密集していたり、放熱しにくい環境だったりすると温度が上がりやすくなります。
そのため、同じ電線サイズでも施工条件によって許容電流が変わるのです。

6.許容電流の補正を考える
例えば、ある電線の基準となる許容電流が40Aだったとします。
しかし施工条件によって、仮に0.8の低減係数を適用する必要があったとします。
すると、
40A × 0.8 = 32A
となります。
つまり、その施工条件では32Aとして考える必要があります。
30Aブレーカーであれば、
30A ≦ 32A
となるため、基本的な関係としては候補になります。
ところが35Aブレーカーだった場合、
35A > 32A
となります。
この場合には、
- さらに太い電線にする
- 施工方法を変更する
などの検討が必要になります。
このように、許容電流は「電線サイズ」だけではなく「施工条件」まで含めて確認することが重要です。
7.ブレーカーと電線の関係
例えば次のような回路を考えてみます。
負荷電流:25A
ブレーカー:30A
そして候補となる電線が、
電線A:許容電流24A
電線B:許容電流32A
電線C:許容電流40A
だったとします。
電線Aは24Aしか許容できないため、25Aの負荷に対して不足しています。
電線Bなら32Aなので、
25A ≦ 30A ≦ 32A
となります。
電線Cなら、
25A ≦ 30A ≦ 40A
となります。
このように、負荷電流 → ブレーカー → 電線の許容電流という順番で確認すると理解しやすくなります。
8.STEP4 電圧降下を確認する
許容電流を満たしたからといって、電線サイズの選定が終わるわけではありません。
次に確認するのが「電圧降下」です。
電線には電気抵抗があるため、電線に電流を流すと途中で電圧が低下します。
基本的には、
電圧降下 Vd = 電流 I × 抵抗 R
という関係があります。

つまり、
- 電流が大きいほど電圧降下が大きくなる
- 電線が長いほど電圧降下が大きくなる
- 電線を太くすると電圧降下が小さくなる
という特徴があります。
例えば30Aを流す回路で、許容電流上はある電線サイズで問題なかったとします。
しかし、「分電盤から負荷まで150mある」という場合には、電圧降下が大きくなる可能性があります。
この場合、「許容電流ではOK」でも、「電圧降下ではNG」となることがあります。
その場合は、許容電流上必要なサイズよりも一段、二段と太い電線を採用することがあります。
つまり、「許容電流上の最低サイズ=実際に採用する電線サイズ」とは限らないということです。
9.電圧降下を確認した後は?
電圧降下まで確認できれば終わり、というわけでもありません。
実際の設備設計では、
- 短絡したときに適切に遮断できるか
- ブレーカーに必要な遮断容量があるか
- 漏電遮断器が必要か
- 必要な接地工事がされているか
- 電線や端子の施工条件に問題がないか
なども確認します。
特に短絡が発生すると、通常運転時とは比較にならないほど大きな電流が流れる可能性があります。
そのため、「通常時に安全に電気を流せるか」だけではなく、「事故が起きたときに安全に遮断できるか」という視点も重要です。
10.間違えやすいポイント
間違い①「ブレーカー30Aなら30Aの電線でよい」
許容電流は施工条件で変わります。表の値では足りていても、温度や布設条件を考慮すると不足する場合があります。
間違い②「太さだけ暗記する」
同じ断面積でも電線種類や施設方法によって条件が違います。数字ではなく、表を引く手順を覚えることが大切です。
間違い③「許容電流を満たしたら終了」
長距離配線では電圧降下がサイズ決定要因になることがあります。さらに短絡保護、遮断容量、接地、漏電保護なども必要です。
間違い④「電動機も照明も同じ考え方」
電動機には始動電流があり、回路設計には個別の規定があります。負荷の種類を最初に確認する理由はここにあります。
11.実務で使える選定チェック手順
実務では次のような順番で考えます。
① 負荷を確認する
電圧・相数・容量・定格電流・負荷の種類などを確認します。
↓
② 設計電流を求める
通常運転時にどの程度の電流が流れるのかを確認します。
↓
③ 回路の種類を確認する
幹線なのか、分岐回路なのか、電動機回路なのかを確認します。
↓
④ ブレーカーを選定する
負荷特性や規定に合わせて、ブレーカーの定格電流や特性を決めます。
↓
⑤ 電線・ケーブルの種類を決める
VVF、IV、CV、CVTなどから使用条件に適したものを検討します。
↓
⑥ 許容電流を確認する
電線種類・施設方法に対応した許容電流を確認します。
↓
⑦ 必要な補正を行う
周囲温度や多数の電線をまとめて施工する場合など、必要な条件を反映します。
↓
⑧ ブレーカーとの関係を確認する
ブレーカーによって電線を適切に保護できるか確認します。
↓
⑨ 電圧降下を計算する
配線距離を考慮し、負荷端で必要な電圧を確保できるか確認します。
↓
⑩ その他の保護条件を確認する
短絡保護、遮断容量、漏電保護、接地などを確認します。
12.まとめ
許容電流とは、「その施工条件で、電線に安全に流すことのできる電流」と考えると分かりやすいでしょう。
しかし、電線サイズは許容電流だけで決定するものではありません。
まず負荷を把握し、設計電流を求めます。
次に負荷特性や回路の種類に合わせてブレーカーを選定します。
そして、
電線種類 → 施工方法 → 許容電流 → 必要な補正
を確認して電線サイズを検討します。
さらに配線距離から電圧降下を確認し、必要であれば電線を太くします。
したがって、初心者の方には、
負荷
↓
設計電流
↓
ブレーカー
↓
電線の許容電流
↓
電線サイズ
↓
電圧降下
↓
短絡・漏電などの保護
という一連の流れを覚えることをおすすめします。

この流れが理解できるようになると、内線規程の表や規定を確認するときにも「なぜこの表を見るのか」「なぜこの電線サイズになったのか」「なぜブレーカーと電線をセットで考えるのか」が少しずつ理解できるようになります。
注意書き
※本記事は、初心者向けに基本的な考え方を説明したものです。実際の電気設備の設計・施工では、電気設備技術基準・その解釈、最新版の内線規程、メーカー仕様、電力会社の供給条件、現場の施工条件等を確認してください。