用語・基礎の解説
建物の想定負荷とは?電気設備の負荷計算を機器・床面積から求める方法
建物の電気設備を計画するとき、「この建物では、どのくらいの電気を使うのか?」を把握する必要があります。
目次
- 本記事を読む前に
- そもそも電気設備の「負荷」とは?
- 建物の想定負荷を計算する2つの方法
- 方法① 使用する電気機器から想定負荷を計算する
- 電気機器から計算するメリット
- すべての電気機器を同時に使うとは限らない
- 方法② 床面積から建物の想定負荷を計算する
- 1㎡当たりの想定負荷は建物用途によって異なる
- 機器からの計算と床面積からの計算はどう使い分ける?
- 計画初期は床面積から概算する
- 使用する電気機器が決まったら積み上げて計算する
- 具体例|2つの想定負荷計算方法を比較
- 床面積から計算する場合
- 使用する電気機器から計算する場合
- 混同しやすい「設備容量」と「最大需要電力」
- まとめ|想定負荷は計画段階に合わせて計算方法を使い分けよう
- 本記事についての注意事項

このときに考えるのが、建物全体の「想定負荷」です。
想定負荷が分かると、受電設備や変圧器・幹線・分電盤などを検討するための基礎になります。
建物全体の想定負荷を求める方法は、大きく分けると次の2つがあります。
- 1. 使用する電気機器から計算する方法
- 2. 床面積から計算する方法
この記事では、電気工事や電気設備設計を始めたばかりの方でもイメージできるように、この2つの負荷計算方法について分かりやすく解説します。
本記事を読む前に
本記事では、電気設備や負荷計算について、理解しやすいよう一般的な考え方や計算例を用いて解説しています。
ただし、実際の電気設備の設計・施工方法は、建物の用途や規模、設備仕様、現場条件、電力会社との協議内容、適用される法令・規程・基準などによって異なります。そのため、すべての現場で必ず本記事と同じ方法・数値が適用できるわけではありません。
実際の設計・施工では、最新の法令・規程・基準やメーカー資料などを確認したうえで、現場の状況に応じて適切に判断してください。
そもそも電気設備の「負荷」とは?
電気設備でいう「負荷」とは、簡単にいえば「電気を使用する機器や設備」のことです。
例えば、建物には次のような負荷があります。
- 照明
- コンセントに接続する機器
- エアコン
- 換気扇
- 給排水ポンプ
- エレベーター
- 厨房機器
- OA機器
- 給湯設備
これらを動かすためには電気が必要です。
そのため、建物の電気設備を設計するには、「この建物では、全部でどのくらいの電気が必要になるのか?」をあらかじめ考えなければなりません。
これが想定負荷を計算する目的です。

建物の想定負荷を計算する2つの方法
建物全体の想定負荷を計算する方法は、大きく分けると、
「使用する電気機器から計算する方法」と「建物の床面積から計算する方法」があります。
どちらか一方だけを使用するというよりも、建物の計画や設計がどこまで進んでいるかによって使い分けると考えると分かりやすいでしょう。

方法① 使用する電気機器から想定負荷を計算する
最もイメージしやすいのが「建物で使用する電気機器を一つずつ積み上げていく方法」です。
例えば、ある建物で次の機器を使用するとします。
- 照明:10kW
- コンセント負荷:15kW
- エアコン:30kW
- 換気設備:5kW
- ポンプ:5kW
- エレベーター:15kW
これらを単純に合計すると、
10+15+30+5+5+15=80kW
となります。
したがって、この建物に設置されている電気機器の容量は、合計80kWと考えられます。
実際には機器によって単相・三相、電圧、力率などが異なるため、より詳細な計算が必要になりますが、基本的な考え方は「各機器の容量を調べて合計する」です。

電気機器から計算するメリット
この方法の大きなメリットは、「実際に使用する設備をもとに計算できること」です。
例えば同じ1,000㎡の建物でも「一般的な事務所」と「大型の厨房機器がたくさんある飲食施設」では、必要な電気容量は大きく違います。
機器を一つずつ確認して計算すれば、その建物の実態に近い負荷を把握できます。
すべての電気機器を同時に使うとは限らない
機器の容量をすべて足した数字が、そのまま実際の最大使用電力になるとは限りません。
例えば、設備容量の合計が80kWで、仮に全体として70%程度の使用を想定すると、
80kW × 0.7 = 56kW
となります。
このように、設備容量と実際に想定する最大需要電力は分けて考える必要があります。
ただし、需要率は何にでも一律に70%を掛ければよいというものではありません。建物用途や負荷の種類、運転方法などを考えて設定する必要があります。

方法② 床面積から建物の想定負荷を計算する
もう一つが「建物の床面積から想定負荷を概算する方法」です。
使用する設備がまだ具体的に決まっていない計画初期では、機器を一つずつ積み上げることができません。
そこで利用できるのが床面積から概算する方法です。
基本的な考え方は、
想定負荷 = 床面積 × 1㎡当たりの想定負荷
です。
例えば、
- 延床面積:1,000㎡
- 負荷原単位:100VA/㎡
と仮定すると、
1,000㎡ × 100VA/㎡ = 100,000VA
つまり、
100kVA
となります。

1㎡当たりの想定負荷は建物用途によって異なる
注意したいのは「すべての建物に同じVA/㎡を使えるわけではない」ということです。
例えば、
- 事務所
- 店舗
- ホテル
- 病院
- 学校
- 工場
- 飲食店
では、使用する電気設備が大きく異なります。
同じ事務所でも空調方式やOA機器の量、サーバー設備の有無などによって必要な電気容量は変わります。
そのため、「○○VA/㎡にすれば絶対に正しい」というものではありません。
過去の類似物件の実績値や設計資料、建物用途などを参考に、適切な負荷原単位を設定することが重要です。

機器からの計算と床面積からの計算はどう使い分ける?
基本的には「設計がどこまで進んでいるか」で使い分けます。
計画初期は床面積から概算する
まだ使用する機器が決まっていない場合は、
床面積 × 負荷原単位
で概算します。
使用する電気機器が決まったら積み上げて計算する
照明、空調、ポンプ、エレベーターなどの仕様が決まってきたら、
実際の機器容量を積み上げて計算します。

具体例|2つの想定負荷計算方法を比較
延床面積1,000㎡の建物を例に、2つの方法を比較してみましょう。
床面積から計算する場合
負荷原単位を仮に100VA/㎡とすると、
1,000㎡ × 100VA/㎡ = 100,000VA
したがって、
100kVA
となります。
使用する電気機器から計算する場合
設計が進み、次の設備を設置することが分かったとします。
- 照明:10kW
- コンセント負荷:15kW
- 空調:35kW
- 換気設備:5kW
- ポンプ:5kW
- エレベーター:15kW
- その他:5kW
合計すると、
10+15+35+5+5+15+5 = 90kW
です。
さらに実際の設計では、需要率や力率、同時運転の条件などを検討し、必要となる電源容量を決めていきます。
なお、kWとkVAは意味が異なるため、90kWと100kVAをそのまま同じものとして比較することはできません。
混同しやすい「設備容量」と「最大需要電力」
建物に設置されている機器の容量を全部足した値と、実際に建物が使用する最大電力は同じとは限りません。
電気設備設計では、
① どんな負荷があるか
↓
② 設備容量はいくらか
↓
③ どの負荷が同時に使用されるか
↓
④ 最大でどの程度の電力を使用するか
という順番で考えていきます。
ここを理解しておくと、「需要率」「最大需要電力」「変圧器容量」などを勉強するときにも理解しやすくなります。
まとめ|想定負荷は計画段階に合わせて計算方法を使い分けよう
建物全体の想定負荷を求める代表的な方法には、
- ① 使用する電気機器から計算する方法
- ② 床面積から計算する方法
があります。
床面積から計算する方法は、使用する設備がまだ決まっていない「計画初期の概算」に向いています。
一方、照明、空調、ポンプ、エレベーターなどの仕様が決まってきたら「実際の機器容量を積み上げる方法」で、より具体的な負荷を計算します。
流れを整理すると、
計画初期:床面積から概算する
↓
設計が進む:使用する電気機器から積み上げる
↓
需要率や同時使用などを考慮する
↓
建物の最大需要電力を検討する
↓
受電設備・変圧器・幹線などの容量を検討する
となります。
想定負荷は、その後の受電設備、変圧器、幹線、遮断器などを決めるための出発点です。
電気設備を勉強し始めたばかりの方は、まず「床面積から概算する方法」と「実際の機器から積み上げる方法がある」という基本を押さえておきましょう。

本記事についての注意事項
本記事の内容は、電気工事・電気設備設計を学ぶ方に向けて、基本的な考え方を分かりやすく説明することを目的としています。
掲載している計算方法、数値、負荷原単位、需要率、設備構成などは説明のための一例であり、すべての建物や現場にそのまま適用できるものではありません。
実際の設計・施工では、建物用途、設備仕様、現場条件などを確認するとともに、最新の法令・規程・基準、電力会社の供給条件、メーカー仕様などに基づいて個別に検討してください。
また、電気設備に関する作業には、資格や専門的な知識が必要となるものがあります。実際の工事・設計については、必要に応じて有資格者や専門家に確認のうえ、適切に判断してください。
なお、本記事の情報を利用したことによって生じた損害・トラブル等について、当サイトでは責任を負いかねますので、あらかじめご了承ください。