用語・基礎の解説

集合住宅の全電化23時型を初心者向けに解説|需要率・重畳率と幹線負荷の計算方法

マンションやアパートなどの集合住宅で幹線容量を考えるとき、「各住戸の設備容量をすべて足せばよい」と考えてしまう方もいるかもしれません。

最終更新: 2026-08-26

目次

しかし実際には、すべての住戸が同時に最大電力を使用するわけではありません。

そこで集合住宅の幹線計算では「需要率」という考え方を使って、実際に発生すると想定される最大負荷を求めます。

さらに全電化住宅では、IHクッキングヒーターや電気給湯設備などの負荷が加わるため、一般的な集合住宅とは少し異なる考え方が必要です。

特に、いわゆる「全電化23時型」では、「昼間の想定負荷」と「23時の想定負荷」をそれぞれ計算し、大きい方を確認するという考え方が重要になります。

この記事では、電気工事や電気設備設計を勉強し始めたばかりの方にも分かるように、需要率・重畳率・23時負荷の意味から、実際の計算方法まで順番に解説します。

全電化23時型の考え方。昼間側は一般負荷×需要率、23時側は一般負荷×需要率×重畳率+夜間給湯負荷で求め、大きい方を幹線設計の基礎として検討する

集合住宅の「想定負荷」とは?

集合住宅の各住戸では、次のような電気設備を使用します。

  • 照明
  • コンセント
  • 冷蔵庫
  • 電子レンジ
  • エアコン
  • IHクッキングヒーター
  • 電気給湯設備

これらの設備容量をすべて足すと大きな容量になりますが、すべての機器が常に最大出力で同時運転するわけではありません。

そこで、「実際にはどの程度の最大負荷が発生すると想定するか」を考えます。

これが集合住宅の幹線計算における「想定負荷」の基本的な考え方です。

集合住宅の幹線計算で需要率を使う理由

例えば、1住戸あたりの一般負荷が6kVAで、10戸の集合住宅があるとします。

単純合計すると、

6kVA × 10戸 = 60kVA

です。

しかし、10戸すべてが同じ瞬間に最大負荷になるとは限りません。

そこで、集合住宅では「需要率」を考慮します。

今回の記事では、計算例として、

昼間の一般負荷需要率=0.7

を使用します。

すると、

60kVA × 0.7 = 42kVA

となります。

つまり、

一般負荷合計60kVA

に対して、

昼間に発生すると想定する負荷は42kVA

という考え方です。

全電化集合住宅では「昼間」と「23時」を分けて考える

全電化住宅では、一般的な照明やコンセントに加えて、

  • IHクッキングヒーター
  • 電気温水器
  • 電気給湯設備
  • エコキュート
  • 電気式暖房設備

などの電気負荷があります。

特に従来の夜間蓄熱式電気温水器などでは、夜間時間帯に給湯負荷が大きくなることがあります。

そのため全電化集合住宅では「昼間の想定負荷」だけでなく「23時頃の一般負荷+夜間給湯負荷」についても確認する必要があります。

そもそも「23時負荷」とは?

従来の時間帯別電灯や深夜電力では、23時以降を夜間時間帯として扱う仕組みがあり、電気温水器などを夜間に運転する方式が広く使われてきました。

しかし23時になった瞬間に、照明・テレビ・エアコンなどの一般負荷がすべてゼロになるわけではありません。

そこへ電気温水器などの夜間負荷が加わります。

つまり、23時頃には「まだ残っている一般負荷」と「夜間給湯負荷」が同時に発生する可能性があります。

この重なりを考えるために使うのが「重畳率」です。

全電化23時型の想定負荷はどうやって計算する?

まず結論から説明します。

全電化23時型では「昼間」と「23時」の2つの想定負荷を計算して比較すると考えると分かりやすいです。

昼間の想定負荷

昼間想定負荷 = 一般負荷合計 × 需要率

23時の想定負荷

23時想定負荷 = 一般負荷合計 × 需要率 × 重畳率 + 夜間負荷合計

最後に「昼間想定負荷」 VS 「23時想定負荷」を比較し、大きい方を幹線設計の基礎負荷として検討します。

つまり、

① 昼間を計算

② 23時を計算

③ 大きい方を確認

という3段階です。

全電化23時型の計算方法

STEP1 一般負荷を住戸数分合計する

1住戸の一般負荷 × 住戸数

で、集合住宅全体の一般負荷を求めます。

STEP2 需要率を掛ける

一般負荷合計に需要率を掛け「昼間想定負荷」を求めます。

STEP3 重畳率を掛ける

昼間想定負荷に重畳率を掛け「23時に残っている一般負荷」を求めます。

STEP4 夜間給湯負荷を加える

23時に残る一般負荷へ、電気温水器などの夜間負荷を加えます。

これが「23時想定負荷」です。

STEP5 昼間と23時を比較する

最後に両方を比較し、大きい方を幹線設計の基礎負荷として検討します。

全電化23時の想定負荷を計算する

全電化23時型の想定負荷計算の流れ。各住戸の一般負荷から住戸数分を合計し、需要率・重畳率を掛け、夜間給湯負荷を加えて昼間と23時を比較するまでの10ステップ

実際に数字を入れて計算してみよう

ここから実際に計算します。

今回の計算条件

項目条件
住戸数10戸
1住戸あたり一般負荷6kVA
昼間の一般負荷需要率0.7
23時の重畳率0.8
1住戸あたり夜間給湯負荷3kVA
今回の全電化集合住宅の計算条件。住戸数10戸、1住戸あたりの一般負荷6kVA、昼間の一般負荷需要率0.7、23時の重畳率0.8、1住戸あたりの夜間給湯負荷3kVA

STEP1 集合住宅全体の一般負荷を求める

1住戸あたり6kVAで10戸なので、

6kVA × 10戸 = 60kVA

したがって、

一般負荷合計=60kVA

となります。

10戸の一般負荷を合計すると60kVA。6kVA×10戸で一般負荷合計60kVAになることを示した図

STEP2 昼間の想定負荷を求める

一般負荷60kVAに、需要率0.7を掛けます。

60kVA × 0.7 = 42kVA

したがって、

昼間想定負荷=42kVAです。

需要率0.7を考慮した昼間の想定負荷。一般負荷合計60kVAに需要率0.7を掛けて昼間想定負荷42kVAを求める図

STEP3 23時に残る一般負荷を求める

次に23時側を計算します。

昼間の想定負荷42kVAが、23時にもそのまま100%残っているとは考えません。

そこで、重畳率0.8を掛けます。

42kVA × 0.8 = 33.6kVA

したがって、

23時に残る一般負荷=33.6kVAです。

重畳率0.8を考慮した23時の一般負荷。昼間想定負荷42kVAに重畳率0.8を掛けて23時に残る一般負荷33.6kVAを求める図

STEP4 夜間給湯負荷を求める

1住戸あたりの夜間給湯負荷を3kVAとしています。

10戸なので、

3kVA × 10戸 = 30kVA

したがって、

夜間給湯負荷合計=30kVAとなります。

10戸分の夜間給湯負荷を合計する図。3kVA/戸×10戸で夜間給湯負荷合計30kVAになる

STEP5 23時の想定負荷を求める

23時には、

一般負荷33.6kVA

と、

夜間給湯負荷30kVAが重なります。

したがって、

33.6kVA + 30kVA = 63.6kVA

つまり、

23時想定負荷=63.6kVA

となります。

最初の計算式に当てはめると、

23時想定負荷

= 一般負荷合計 × 需要率 × 重畳率 + 夜間負荷合計

= 60 × 0.7 × 0.8 + 30

= 33.6 + 30

= 63.6kVA

です。

全電化23時の想定負荷を計算する

23時は一般負荷と夜間給湯負荷が重なる。23時に残る一般負荷33.6kVAと夜間給湯負荷合計30kVAを足して23時想定負荷63.6kVAになる図

STEP6 昼間と23時を比較する

時間帯計算想定負荷
昼間60 × 0.742kVA
23時60 × 0.7 × 0.8 + 3063.6kVA

したがって、

42kVA < 63.6kVAです。

今回の条件では、23時の63.6kVAの方が大きいという結果になりました。

そのため、この例では、63.6kVA側を幹線設計の基礎負荷として検討するという考え方になります。

全電化23時の想定負荷を計算する

昼間42kVAと23時63.6kVAの比較グラフ。23時は一般負荷33.6kVAと夜間給湯負荷30kVAの積み上げで、23時の方が大きい

想定負荷63.6kVAを電流Aへ変換してみよう

想定負荷が63.6kVAと求められたら、次は幹線電流を考えます。

今回、単相3線式100/200Vで、L1・L2の負荷が適切に平衡しているものとして考えます。

単相3線式で平衡した負荷容量を電流へ換算する場合、

電流A = 想定負荷VA ÷ 200V

と考えることができます。

63.6kVAは、63,600VAなので、

63,600VA ÷ 200V = 318Aです。

したがって概算では、

63.6kVA → 約318Aとなります。

63.6kVAの想定負荷を電流Aへ換算する図。単相3線式100/200Vで63,600VAを200Vで割り約318Aになる

主幹ブレーカー選定について

ここは重要です。

「計算結果が318Aだから、そのまま318Aの主幹ブレーカーを付ければよい」という意味ではありません。

318Aは、63.6kVAという想定負荷を電流へ換算した値です。

実際の幹線・主幹ブレーカー設計では、

  • L1・L2の負荷バランス
  • 電線の許容電流
  • 電圧降下
  • 幹線の長さ
  • 電線の敷設方法
  • 周囲温度
  • 遮断器の定格
  • 保護協調
  • 将来負荷
  • 一般送配電事業者との協議
  • 実際の設備条件

などについても確認する必要があります。

全電化住宅は現在も必ず23時型なの?

現在の全電化集合住宅がすべて、「23時になったら夜間給湯設備が一斉に動く」というわけではありません。

現在では、

  • エコキュート
  • HEMS
  • 蓄電池
  • 太陽光発電
  • 自動沸き上げ制御
  • ピークシフト制御

などが存在します。

そのため、「全電化だから必ず23時型」と機械的に判断するのではなく、実際に採用する設備・制御方式・供給条件などを確認する必要があります。

全電化23時型の幹線計算まとめ

全電化23時型で重要なのは、「昼間の最大需要だけでなく、夜間負荷が重なる時間帯も確認する」ということです。

1. 各住戸の一般負荷を求める

2. 住戸数分を合計する

3. 需要率を掛けて昼間負荷を求める

4. 重畳率を掛けて23時に残る一般負荷を求める

5. 夜間給湯負荷を加える

6. 昼間と23時を比較する

7. 大きい方を幹線負荷の基礎とする

8. kVAからAへ換算する

9. 電線・遮断器・電圧降下等を別途確認する

実際の設計・施工をされる方へ|この記事の注意点

この記事では、電気工事や電気設備設計を勉強し始めた方にも理解しやすいよう、全電化23時型の幹線計算をできるだけ単純化して説明しています。

そのため、内線規程に記載されているすべての条件・例外・地域ごとの取扱いなどを網羅したものではありません。

また、今回使用した、

需要率0.7

重畳率0.8

についても、この記事の計算条件として使用したものです。

すべての集合住宅に一律適用できる数値という意味ではありません。

実際の電気設備では、建物の規模や用途、住戸数、給湯方式、契約内容、使用設備、配線方式、電線の敷設条件、供給区域などによって設計条件が変わります。

そのため、実際の設計・施工では、その現場に適用される最新の内線規程、電気設備技術基準、メーカー施工説明書、一般送配電事業者の規定・取扱いなどを必ず確認してください。

判断が難しい場合は、電気工事士、電気主任技術者、電気設備設計者、一般送配電事業者などの専門家・関係機関へ確認することをおすすめします。

また、本記事は一般的な情報提供および学習を目的としており、個別設備の安全性や設計結果を保証するものではありません。

本記事を参考にした設計・施工等によって事故、設備故障、損害その他のトラブルが生じた場合については責任を負いかねます。

「記事の数字をそのまま現場へ当てはめる」のではなく、「計算の考え方を理解し、実際の現場条件と照合する」ための参考資料としてご活用ください。