用語・基礎の解説
集合住宅の全電化マイコン型とは?需要率・重畳率と幹線負荷の計算方法を初心者向けに解説
マンションやアパートなどの全電化集合住宅で幹線容量を計算するとき、「全電化マイコン型」という言葉を目にすることがあります。
目次
- そもそも全電化マイコン型とは?
- 全電化マイコン型では何を計算するの?
- ① 住戸の一般負荷
- ② 電気温水器の負荷
- 全電化マイコン型でも需要率を考える
- マイコン型で重要になる「電気温水器の負荷」
- 全電化マイコン型の計算式を理解しよう
- なぜ一般負荷に重畳率を掛けるの?
- 全電化マイコン型の想定負荷を実際に計算してみよう
- 今回の計算条件
- STEP1 一般負荷の合計を求める
- STEP2 需要率を掛ける
- STEP3 重畳率を掛ける
- STEP4 電気温水器の負荷を求める
- STEP5 幹線最大需要負荷を求める
- 昼間の一般負荷とも比較しておこう
- 全電化マイコン型の計算を1枚で整理
- 想定負荷59.4kVAを電流Aへ変換してみよう
- 共用部負荷はどこに入れるの?
- 全電化23時型と全電化マイコン型の違いは?
- 全電化マイコン型の幹線計算まとめ
- 実際の設計・施工をされる方へ|この記事の注意点
電気設備の設計を始めたばかりだと、
「マイコン型って何?」
「全電化23時型とは何が違うの?」
「電気温水器の容量はそのまま全部足すの?」
「需要率や重畳率はどこで使うの?」
と疑問に思う方も多いでしょう。
全電化集合住宅では、一般負荷だけではなく、電気温水器などの給湯負荷についても考慮して幹線の最大需要を検討します。
この記事では、内線規程における全電化集合住宅の負荷想定の考え方をもとに、「全電化マイコン型」の幹線負荷計算を初心者向けに解説します。

そもそも全電化マイコン型とは?
全電化マイコン型を理解するためには、まず「マイコン」という言葉を理解しておきましょう。
ここでいうマイコン型は、主に「マイコン制御型の電気温水器を使用する全電化住宅」を考えたものです。
従来の電気温水器では、夜間時間帯にヒーターを使ってお湯を沸かし、タンクへ蓄えておく方式が広く使用されてきました。
マイコン制御型では、給湯設備側で必要な湯量などを判断しながら沸き上げを制御します。
つまり、「電気温水器があるから、単純にすべての定格容量を一般負荷へ足す」という考え方ではなく「一般負荷と電気温水器の負荷特性を考慮して幹線負荷を検討する」ことがポイントです。
全電化マイコン型では何を計算するの?
まず全体像をつかみましょう。
考える負荷を大きく分けると、
① 住戸の一般負荷
照明、コンセント、IHクッキングヒーター、エアコン、家電などです。
② 電気温水器の負荷
マイコン制御型電気温水器などの給湯負荷です。
この2種類の負荷を考えて、「幹線では最大でどの程度の負荷になると想定するか」を求めます。

全電化マイコン型でも需要率を考える
例えば、10戸の集合住宅があるとします。
仮に1住戸の一般負荷を6kVAとすると、
6kVA × 10戸 = 60kVA
です。
しかし、10戸すべてが同じ瞬間に6kVAを使用するとは限りません。
そこで一般負荷について「幹線の需要率」を考慮します。
仮に今回の説明例として、
需要率=0.7
とします。
すると、
60kVA × 0.7 = 42kVA
となります。
したがって、この条件では、
一般負荷の最大需要=42kVA
となります。

マイコン型で重要になる「電気温水器の負荷」
ここからが全電化マイコン型を理解するうえで重要です。
電気温水器は、一般負荷とは負荷特性が異なります。
公開されている技術資料などでは、従来のヒータ式マイコン制御型電気温水器について、「日中はほとんど動作せず、深夜にピークが現れる」という特徴を踏まえて幹線最大需要電力を想定する考え方が説明されています。
つまり、「一般負荷のピーク」と「電気温水器のピーク」をどのように重ねて考えるかがポイントになります。

全電化マイコン型の計算式を理解しよう
従来のヒータ式マイコン制御型電気温水器を備えた幹線の最大需要電力について、次の考え方が示されています。
P₀ = P × n × d × k + Pw × n
記号の意味は次のとおりです。
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| P | 1住戸の一般電力の最大需要電力(各戸想定負荷容量) |
| n | 1幹線に接続される住戸数 |
| d | 一般電力の幹線総合需要率 |
| k | 重畳率 |
| Pw | 1住戸の深夜電力 |
| P₀ | 深夜電力を含む幹線最大需要電力 |
初心者向けに言い換えると、
幹線最大需要負荷=一般負荷 × 戸数 × 需要率 × 重畳率+電気温水器負荷 × 戸数
という構造です。

なぜ一般負荷に重畳率を掛けるの?
ここは初心者が特につまずきやすいポイントです。
一般負荷の最大需要が42kVAだったとしても、電気温水器の負荷が最大になる時間帯に、一般負荷も42kVAそのまま発生しているとは限りません。
そこで、「給湯負荷のピーク時間帯に、一般負荷がどの程度重なるのか」を考えるのが重畳率です。
つまり、
- 需要率
- 各住戸の一般負荷が同時に最大にならないことを考慮
- 重畳率
- 給湯負荷のピークと一般負荷のピークが完全には一致しないことを考慮
と理解すると分かりやすいでしょう。

全電化マイコン型の想定負荷を実際に計算してみよう
ここからは実際に数字を入れて考えてみます。
今回の計算条件
説明を分かりやすくするため、次の条件を使用します。
| 項目 | 条件 |
|---|---|
| 住戸数 | 10戸 |
| 1住戸の一般負荷 | 6kVA |
| 一般負荷の需要率 | 0.7 |
| 重畳率 | 0.7 |
| 1住戸の電気温水器負荷 | 3kVA |
重要:ここで使用する「6kVA」「需要率0.7」「電気温水器3kVA」は計算方法を説明するための例です。
一方、公開されている内線規程関連資料では、従来方式の考え方を踏襲する重畳率として0.7が説明されています。
実際の設計では、最新版の内線規程、適用する需要率表、設備仕様、メーカー資料等を確認してください。

STEP1 一般負荷の合計を求める
1住戸6kVAで10戸なので、
6kVA × 10戸 = 60kVA
です。
したがって、
一般負荷合計=60kVA
です。
STEP2 需要率を掛ける
一般負荷60kVAに需要率0.7を掛けます。
60 × 0.7 = 42kVA
したがって、
一般負荷の最大需要=42kVA
です。
STEP3 重畳率を掛ける
次に42kVAへ重畳率0.7を掛けます。
42 × 0.7 = 29.4kVA
したがって、
給湯負荷のピーク時間帯に重なる一般負荷=29.4kVA
と考えます。
一般負荷合計から一本につなげると、
60 × 0.7 × 0.7 = 29.4kVA
です。

STEP4 電気温水器の負荷を求める
今回の例では、1住戸の電気温水器負荷を3kVAとしています。
10戸なので、
3kVA × 10戸 = 30kVA
です。
したがって、
給湯負荷合計=30kVA
となります。
STEP5 幹線最大需要負荷を求める
ここまでで、
一般負荷側=29.4kVA
給湯負荷側=30kVA
となりました。
したがって、
29.4 + 30 = 59.4kVA
です。
つまり今回の説明条件では、
幹線最大需要負荷=59.4kVA
となります。
式を最初から書くと、
6 × 10 × 0.7 × 0.7 + 3 × 10=29.4+30
=59.4kVA
です。

昼間の一般負荷とも比較しておこう
ここで注意したいのが、「59.4kVAだけ計算して終わり」と機械的に考えないことです。
今回の昼間一般負荷は、
60 × 0.7 = 42kVA
です。
一方、給湯負荷が重なる側は、
59.4kVA
です。
したがって今回の条件では、昼間42kVA < 給湯負荷重畳時59.4kVAとなります。
つまり、今回の例では、「59.4kVA側が大きい」という結果です。

全電化マイコン型の計算を1枚で整理
今回の計算を最初から整理します。
一般負荷6kVA/戸 × 10戸
↓
60kVA
↓
×需要率0.7
↓
42kVA
↓
×重畳率0.7
↓
29.4kVA
そこへ、
電気温水器3kVA/戸 × 10戸=30kVA
を加えます。
したがって、
29.4+30=59.4kVA
です。
そして、昼間「42kVA」と給湯負荷重畳時「59.4kVA」を比較します。
今回の例では、
42kVA < 59.4kVA
なので、59.4kVA側を幹線設計の基礎負荷として検討するという流れになります。

想定負荷59.4kVAを電流Aへ変換してみよう
想定負荷が59.4kVAと求められたら、次は幹線電流へ換算してみます。
単相3線式100/200Vで、L1・L2が適切に平衡している条件を想定すると、
電流A = 想定負荷VA ÷ 200V
として概算できます。
59.4kVAは、59,400VAなので、
59,400 ÷ 200 = 297A
です。
したがって、59.4kVA → 約297Aとなります。
ただし、「297Aと計算されたから297Aの主幹ブレーカーを付ければよい」という意味ではありません。
これは想定負荷を電流へ換算した値です。
実際の幹線設計では、
- 電線の許容電流
- 電圧降下
- L1・L2の負荷バランス
- 電線の敷設条件
- 遮断器の定格
- 保護協調
- 幹線長
- 将来負荷
- 共用部負荷
- 供給方式
- 一般送配電事業者との協議
などを別途確認します。
共用部負荷はどこに入れるの?
全電化23時型の記事と同じく「共用部は住戸負荷とは分けて考える」のが分かりやすいです。
共用部には、
- 共用廊下照明
- エントランス照明
- 外灯
- エレベーター
- 給水ポンプ
- 排水ポンプ
- 換気設備
- 管理室
- 機械式駐車設備
などがあります。
これらを、「1住戸6kVA × 戸数 × 需要率」の中へそのまま混ぜるのではなく、住戸部分の想定負荷と共用部分の想定負荷をそれぞれ検討し、建物全体として必要となる負荷を確認します。
特にエレベーターや給排水ポンプなどの動力設備については、設備容量や運転条件などを確認する必要があります。
全電化23時型と全電化マイコン型の違いは?
初心者の方は、ここを整理しておくと理解しやすくなります。
全電化23時型でも全電化マイコン型でも「一般負荷だけではなく、夜間・給湯負荷が重なる状態を考える」という基本的な方向性は共通しています。
ただし、採用する給湯設備や制御方式によって負荷特性が異なるため、適用する計算条件を確認する必要があります。
特に現在は、従来のヒータ式電気温水器だけでなく、ヒートポンプ式給湯機(エコキュート)が広く使用されています。
ヒートポンプ式給湯機については、従来のヒータ式マイコン制御型電気温水器とは動作原理や負荷特性が異なるため、内線規程では2011年版からヒートポンプ式給湯機用の需要率表が追加されています。
そのため、「全電化だから全部同じ計算式・同じ係数で計算する」と考えないことが重要です。
全電化マイコン型の幹線計算まとめ
全電化マイコン型の基本的な考え方は「一般負荷」と「マイコン制御型電気温水器などの給湯負荷」の重なりを考えて、幹線の最大需要を求めることです。
今回の例では、
一般負荷合計 6 × 10=60kVA
一般負荷の最大需要 60 × 0.7=42kVA
給湯負荷と重なる一般負荷 42 × 0.7=29.4kVA
給湯負荷 3 × 10=30kVA
幹線最大需要負荷 29.4+30=59.4kVA
となりました。
したがって、「昼間42kVA」と「給湯負荷重畳時59.4kVA」を比較すると、
42 < 59.4
なので、今回の条件では59.4kVA側を幹線設計の基礎として検討するという結果になります。
初心者の方は、
P₀=P×n×d×k+Pw×n
という式だけを暗記するのではなく、
- 「需要率は何を減らしているのか?」
- 「重畳率は何と何の重なりを考えているのか?」
- 「なぜ給湯負荷を最後に加えるのか?」
を理解しておくことが重要です。
実際の設計・施工をされる方へ|この記事の注意点
この記事は、電気工事や電気設備設計を始めたばかりの方が、全電化マイコン型の幹線負荷計算の考え方を理解することを目的とした入門解説です。
実際の設計条件は、建物規模、住戸数、各戸想定負荷、給湯設備の種類・容量、制御方式、共用部設備、供給方式、電線の敷設条件、供給区域などによって変わります。
また、本記事の計算例で使用した、
1住戸一般負荷6kVA
需要率0.7
1住戸給湯負荷3kVA
は、計算手順を説明するために設定した条件であり、すべての集合住宅へ一律に適用する値ではありません。
実際の設計・施工では、最新版の内線規程、電気設備技術基準・解釈、採用する給湯機器のメーカー資料、一般送配電事業者の規定・取扱いなどを確認してください。
特に、ヒータ式マイコン制御型電気温水器とヒートポンプ式給湯機では負荷特性が異なるため、採用設備に対応した算定方法・需要率表を確認することが重要です。
判断が難しい場合は、電気設備設計者、電気工事士、電気主任技術者、一般送配電事業者などの専門家・関係機関へ確認してください。
本記事は一般的な情報提供・学習を目的とするものであり、個別設備の設計結果や安全性を保証するものではありません。
本記事を参考にした設計・施工等によって事故、設備故障、損害その他のトラブルが生じた場合については責任を負いかねます。
記事の数値をそのまま現場へ当てはめるのではなく、計算の考え方を理解し、実際の現場条件と照合するための参考資料としてご活用ください。