用語・基礎の解説
ケーブルラックの推奨幅を計算する6つの式|選定方法と計算例をわかりやすく解説
ケーブルラックの幅を選定する際は、単純にケーブル外径の合計だけで決めるのではなく、ケーブル同士の間隔、放熱性、施工性、将来の増設、強電線と弱電線の分離などを考慮する必要があります。
この記事では、ケーブルラックの推奨幅を計算する6つの代表的な算定式について、用途別の使い分けや計算例を交えながら詳しく解説します。
なお、各式は設計上の目安です。実際の選定では、設計図書、特記仕様書、電気設備技術基準、内線規程、発注者基準、ケーブルメーカーの許容電流低減率、ラックメーカーの製品寸法などを併せて確認してください。
ケーブルラック幅を決める要素について

ケーブルラックの幅は、計算式だけで一律に決めるのではなく、敷設するケーブルの種類や本数、施工条件、将来計画などを総合的に考慮して決定します。主な要素は、次のとおりです。
- ケーブルの外径と本数
- 敷設するケーブルの仕上外径と本数は、必要なラック幅を決める基本条件です。本数が多いほど必要幅は大きくなり、ケーブル径が異なる場合は、それぞれの外径を確認して算定します。
- ケーブル相互の離隔と放熱性
- 電力ケーブルでは、ケーブル同士を密着させると放熱条件が悪化し、許容電流に影響する場合があります。特に高圧幹線や大電流を流す低圧幹線では、必要な離隔を確保できる幅を検討します。
- 施工性と保守性
- ケーブルの敷設、結束、分岐、更新などの作業を行える余裕が必要です。計算上は収まる場合でも、ケーブルが過密になると施工や保守が難しくなるため、作業スペースを考慮します。
- 将来の増設スペース
- 設備の増設や改修によってケーブルが追加される可能性がある場合は、あらかじめ余裕を確保します。ただし、過大な余裕はラックや支持材の大型化につながるため、将来計画に応じて設定します。
- 標準製品寸法と設置スペース
- 計算で求めた必要幅に対して、原則として直近上位の標準製品寸法を選定します。天井内やシャフト内などの設置可能寸法、支持方法、他設備との干渉も併せて確認することが重要です。
これらの要素を確認したうえで、次に示す算定式を用途に応じて使い分けることで、施工性・放熱性・将来性のバランスを考慮したケーブルラック幅を選定できます。
ケーブルラックの推奨幅を計算する6つの算定式
① 強電用・標準的な1段積みの場合

下記の計算式は強電ケーブルをラック上に原則として1段で並べる場合の標準的な算定式です。
W≧1.2{Σ(D+10)+60}
各ケーブルについて、外径Dに10mmを加えた値を合計し、さらに両端の余裕として60mmを加えます。最後に1.2を掛けることで、施工時の配列の乱れやケーブル外径のばらつき、若干の増設余裕を確保します。
計算例
仕上外径30mmのケーブルを5本敷設する場合
W≧1.2×{5×(30+10)+60}
W≧312mm
この場合は、標準製品の中から400mm程度のラックを選定します。
② 強電用・将来増設を考慮する場合
基本的な考え方は①と同じですが、端部余裕と将来増設スペースを合計120mm確保する式です。
W≧1.2{Σ(D+10)+120}
将来的にケーブル追加の可能性が高い建物や、改修工事が多い工場・通信施設・データセンターなどで採用されます。
ただし、余裕を大きく取りすぎるとラック寸法や支持材も大型化し、工事費や必要スペースが増えるため、特記仕様書がある場合はその条件を優先します。
③ 高圧幹線・放熱性を重視する場合

高圧幹線や大電流を流す低圧幹線など、放熱性を重視する場合の算定式です。
W≧1.2{Σ(D+D)+60}
ケーブル外径と同程度の離隔を確保するため、D+Dとして計算します。
これによりケーブル同士が密着しにくくなり、放熱条件を改善できます。
ただし、この式だけで許容電流低減率が保証されるわけではありません。最終的にはケーブルメーカーの資料や設計基準による確認が必要です。
④ 弱電用・2段積みの場合

通信線、制御線、LANケーブルなどの弱電ケーブルを上下2段程度に敷設する場合の算定式です。
W≧0.6{Σ(D+10)+120}
1段敷設時の必要幅に0.6を掛けることで、多段積みによる幅方向の縮小を考慮しています。
弱電ケーブルは本数が増えやすいため、将来増設を考慮して120mmの余裕を確保します。
⑤ 弱電用・3段積みの場合

弱電ケーブルを3段程度に積み重ねる場合の算定式です。
W≧0.4{Σ(D+10)+120}
理論上は約0.33ですが、実際にはケーブル径の違いや交差、施工スペースなどを考慮して0.4程度を採用します。
なお、多段積みでは保守性や曲げ半径、荷重、信号品質にも注意が必要です。
ラック幅だけでなく、側板高さや積載荷重も確認しましょう。
⑥ 強電線と弱電線を同一ラック内で分離する場合

各部分は次の式で求めます。
W≧W強電+W弱電+Wセパレータ幅
W強電=1.2{Σ(D+10)+30}
W弱電=1.2{Σ(D+10)+60}
Wセパレータ幅=約30〜50mm
セパレータ(仕切り板)を設けて、強電線と弱電線を左右に分離する場合の算定式です。
今回は強電側・弱電側共に1段積みを想定してそれぞれ計算し、最後にセパレータ幅を加算します。
なお、ノイズ対策としては、電圧や信号の種類、接地方法、並行敷設距離なども考慮し、必要に応じて別ラックや金属製セパレータの採用を検討します。
ケーブルラック幅を選定するときの注意点
計算で得られたWは必要最小幅の目安です。
製品を選ぶ際は、計算値を下回らない直近上位の標準寸法を選定します。
また、ラック幅だけでなく、以下の項目も確認することが重要です。
- ケーブル総重量
- 支持間隔
- 曲げ半径
- 分岐部の施工スペース
- 耐震支持
- 将来増設後の占有率
- 放熱性
- 保守性
ケーブルラック幅の計算式を正しく使い分けることが重要
ケーブルラックの推奨幅は、用途によって適切な計算式が異なります。
- 強電用標準敷設
- 将来増設を考慮した設計
- 放熱性を重視した高圧幹線
- 弱電ケーブルの2段・3段積み
- 強電・弱電の分離敷設
この6つの算定式を適切に使い分けることで、放熱不足や施工性の低下を防ぎながら、過剰なラックサイズによるコスト増も避けられます。
最終的には、現在のケーブル本数だけでなく、設備用途、発熱量、保守性、将来の増設計画まで含めて総合的にケーブルラック幅を決定することが重要です。