用語・基礎の解説

許容電流とは?周囲温度・耐熱温度・施工方法・温度補正をわかりやすく解説

最終更新: 2026-10-07

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電線やケーブルを選定するときに重要になるのが「許容電流」です。

たとえば同じ太さの電線でも、IVなのかCVなのか、周囲温度が30℃なのか50℃なのか、空気中に単独で敷設するのか、電線管に何本も収めるのかによって、安全に流せる電流は変わります。

許容電流を理解するポイントは、「電流を流すと電線が発熱する」ということです。

この記事では、許容電流とは何かという基本から、電線の太さ、耐熱温度、周囲温度、施工方法との関係、さらに周囲温度が変わった場合の温度補正まで順番に解説します。

許容電流とは?

許容電流とは何か、絶縁体の耐熱性能・周囲温度・施工方法・電線やケーブルの本数による違いを示した図

許容電流とは、簡単にいうと、「電線やケーブルに安全に連続して流すことができる電流の上限」です。

電線やケーブルに電流を流すと、内部の導体が発熱します。

流れる電流が大きくなるほど発熱も大きくなり、電線の温度も上昇します。

しかし、電線を覆っている絶縁体には耐えられる温度の上限があります。

そのため、

電流が流れる

↓

導体が発熱する

↓

電線の温度が上がる

↓

絶縁体が耐えられる温度を超えないようにする必要がある

という考え方が、許容電流の基本になります。

つまり、許容電流は単純に「この太さの電線なら○A」と決まるものではありません。

同じ太さの電線・ケーブルでも、絶縁体の耐熱性能や周囲温度、施工方法、電線・ケーブルの本数などによって熱の逃げやすさが変わるため、許容電流も変わります。

まずは、「許容電流=電線が熱くなりすぎない範囲で、安全に連続して流せる電流の上限」と覚えておけばよいでしょう。

なぜ電線の太さによって許容電流が違う?

太い電線ほど電気抵抗が小さくなり許容電流が大きくなる理由を示した図

基本的には、導体が太くなるほど電気抵抗が小さくなります。

そのため、

導体が太くなる

↓

電気抵抗が小さくなる

↓

同じ電流でも発熱しにくくなる

↓

より大きな電流を流せる

という関係になります。

これが「太い電線ほど許容電流が大きい」基本的な理由です。

たとえば幹線や大きな設備では大きな電流を流す必要があるため、住宅の照明回路などで使用する電線よりも太い電線・ケーブルが使用されます。

ただし、ここで注意したいのが、導体サイズだけで許容電流が決まるわけではないということです。

同じ導体サイズでも、電線・ケーブルの種類や施工条件によって許容電流は変わります。

許容電流を決める主な4つの要素

許容電流を理解するときは、主に次の4つを分けて考えると分かりやすくなります。

許容電流と導体サイズ・耐熱温度・周囲温度・施工方法の関係をまとめた表

つまり、許容電流は、「どれだけ発熱するのか」と、「発生した熱をどれだけ外へ逃がせるのか」の両方を考えて決まります。

この中でも特に混同しやすいのが、「耐熱温度」と「周囲温度」です。

この2つは意味がまったく異なるため、分けて理解することが重要です。

耐熱温度とは?許容電流との関係

電線・ケーブルは基本的に、

導体 → 絶縁体 → 必要に応じてシース

という構造になっています。

「導体」は電気を流す部分で、一般的には銅などが使用されています。

その導体を直接覆っているのが「絶縁体」です。

絶縁体には、電気が外へ漏れたり、他の導体と接触して短絡したりすることを防ぐ役割があります。

そして、この絶縁体には耐えられる温度の上限があります。

代表的な電線・ケーブルを簡略化すると、次のように整理できます。

IV・HIV・EM-IE・VVF・CV・CVT・EMケーブルの主な絶縁体と代表的な許容温度を比較した表

ここでいう60℃や90℃は、周囲の気温が60℃・90℃まで使用できるという意味ではありません。

許容電流を考えるうえでは、絶縁材料に応じた導体の最高許容温度の代表値として理解するのがポイントです。

たとえば、IVはビニル絶縁のため代表的な最高許容温度は60℃、CVは架橋ポリエチレン絶縁のため90℃です。

つまり、同じ導体サイズでも、絶縁体の耐熱性能が異なれば、許容電流も異なる場合があります。

周囲温度とは?温度が高いと許容電流が下がる理由

周囲温度とは、文字どおり電線・ケーブルの周囲の温度です。

ここが先ほど説明した「最高許容温度」との大きな違いです。

たとえば、最高許容温度が60℃の電線について考えてみます。

周囲温度が30℃の場合、

60℃ − 30℃ = 30℃

の温度差があります。

一方、周囲温度が50℃だった場合、

60℃ − 50℃ = 10℃

しかありません。

つまり、周囲がすでに暑ければ、電線自身が発熱できる温度の余裕が小さくなります。

反対に、周囲温度が低ければ熱を外へ逃がしやすくなるため、温度条件だけを見れば許容電流を確保しやすくなります。

周囲温度が30℃から50℃に上がると最高許容温度までの余裕が30℃から10℃に小さくなり、許容電流が下がる理由を示した図

許容電流表の「30℃」「40℃」とは?

許容電流を調べていると、「周囲温度30℃」「周囲温度40℃」といった条件が出てきます。

この30℃や40℃は、導体の最高許容温度ではありません。

許容電流表を算定するときに基準としている周囲温度です。

たとえば、

基準周囲温度30℃

の許容電流表であれば、表に記載されている許容電流は、基本的に周囲温度30℃という条件を前提としています。

実際の施工場所の周囲温度が40℃や50℃になる場合には、その表の許容電流をそのまま使用するのではなく、適用する規程・規格や技術資料に従って温度補正を行います。

ここで「導体の最高許容温度」と「許容電流表の基準周囲温度」を混同しないことが重要です。

周囲温度が変わった場合の許容電流の計算方法

ここまで、周囲温度が高くなるほど許容電流が小さくなる理由を説明しました。

ここからは、実際に周囲温度が変わった場合、許容電流をどのように考えるのかを計算式を使って見ていきます。

まず、電線に電流を流したときに発生する熱は、基本的に次の関係で考えられます。

P = I²R

P:発生する熱

I:電流

R:導体の抵抗

ここで重要なのが、電流「I」が2乗で影響することです。

たとえば抵抗が同じと仮定すると、

10Aの場合

10²=100

20Aの場合

20²=400

となります。

つまり、電流が2倍になると、発熱に関係する値は4倍になります。

この「電流と発熱の関係」があるため、周囲温度が高くなった場合の許容電流は、単純な比例計算では考えられません。

周囲温度による温度補正係数の計算式

周囲温度による補正の考え方を理解するための基本式として、次の式があります。

K = √{(Tmax − Ta)÷(Tmax − T0)}

それぞれの意味は次のとおりです。

K:温度補正係数

Tmax:導体の最高許容温度

T0:許容電流表の基準周囲温度

Ta:実際の周囲温度

そして、

補正後の許容電流 = 基準となる許容電流 × K

と考えます。

計算例|最高許容温度60℃・周囲温度50℃の場合

例として、

導体の最高許容温度:60℃

許容電流表の基準周囲温度:30℃

実際の周囲温度:50℃

という条件で考えてみます。

温度補正係数は、

K = √{(60−50)÷(60−30)}

となります。

計算すると、

K = √(10÷30)

K ≒ 0.58

です。

仮に、基準となる許容電流が30Aだった場合、

30A × 0.58 ≒ 17.4A

となります。

この例では、基準周囲温度30℃から実際の周囲温度が50℃に上昇したことで、導体が最高許容温度に達するまでの温度の余裕が小さくなり、許容電流も小さくなることが分かります。

なぜ許容電流は単純な比例計算ではない?

ここで先ほどの、

P = I²R

が重要になります。

電流による発熱は電流の2乗に関係するため、

「周囲温度が10℃上がったから許容電流を10%下げる」

といった単純な比例関係ではありません。

そのため、温度補正では平方根を含む考え方が使われます。

ただし、実際の電線・ケーブル選定では、この計算式だけで許容電流を決定するわけではありません。

適用する規程・規格やメーカー技術資料などに温度補正係数が示されている場合は、それらを確認して判断することが重要です。

施工方法によって許容電流が変わる理由

許容電流に大きく影響するもう一つの要素が、施工方法です。

同じ電線・ケーブルであっても、施工方法によって熱の逃げやすさが変わります。

基本的な考え方は、

熱が逃げやすい施工

→ 許容電流を確保しやすい

熱が逃げにくい施工

→ 許容電流を小さくする必要がある

という関係です。

電線管に複数の電線を収める場合

たとえばIVやEM-IE/Fなどの電線を電線管に収める場合を考えてみます。

複数の電線に電流が流れると、それぞれの電線が発熱します。

電線Aが発熱

+

電線Bが発熱

+

電線Cが発熱

↓

電線管の中に熱がこもりやすくなる

という状態になります。

そのため、同一の電線管、線ぴ、ダクトなどに収める電線数が増える場合には、その影響を考慮して許容電流を確認する必要があります。

「IV 5.5sqだから○A」とサイズだけを見るのではなく、何本の電線をどのように収めるのかまで確認することが重要です。

ケーブルをまとめて施工する場合

VVFやCVなどのケーブルでも基本的な考え方は同じです。

複数のケーブルを密集させたり、まとめて施工したりすると、それぞれのケーブルから発生した熱が逃げにくくなります。

そのため、

ケーブルの条数

ケーブル同士の間隔

配列

敷設方法

周囲の放熱条件

などによって許容電流が変わる場合があります。

天井内のころがし配線の場合

VVFなどを天井内にころがし配線する場合でも、

「ころがし配線だから許容電流は○A」

と一律に考えられるわけではありません。

たとえば、

天井内の周囲温度

ケーブルが密集しているか

断熱材との位置関係

他のケーブルとの離隔

実際の敷設状態

などによって、熱の逃げやすさが変わります。

つまり施工方法を考えるときは、単に「管内」「ころがし」「ラック」といった名称だけを見るのではなく、

「その施工状態で、電線・ケーブルから発生した熱がどれだけ逃げやすいのか」

という視点で考えることが重要です。

許容電流は電線そのものの性能だけでは決まらない

ここまでの内容をまとめると、許容電流は、

電線・ケーブルの種類

+

導体サイズ

+

絶縁体の耐熱性能

+

周囲温度

+

施工方法

+

電線・ケーブルの本数や条数

+

放熱条件

などによって決まります。

そのため、

「CV 14sqの許容電流は何Aですか?」

という質問だけでは、本来は条件が不足しています。

同じCV 14sqでも、

空中に敷設するのか

電線管に収めるのか

ケーブルラックに敷設するのか

複数条を並べるのか

周囲温度が何℃なのか

などによって、適用する許容電流が変わる可能性があります。

許容電流表を見るときには、数字だけを見るのではなく「その数字がどの条件を前提としているのか」を確認することが重要です。

許容電流を確認するときの計算・選定手順

実際に許容電流を確認するときは、次の順番で考えると整理しやすくなります。

① 電線・ケーブルの種類を確認する

まず、使用する電線・ケーブルの種類を確認します。

たとえば、

IV

HIV

EM-IE/F

VVF

CV

CVT

EM-CE/F

EM-CET/F

などです。

電線・ケーブルの種類によって絶縁体や構造、適用する許容電流表などが異なります。

② 導体サイズを確認する

次に導体サイズを確認します。

たとえば、

1.6mm

2.0mm

5.5sq

14sq

38sq

などです。

基本的には、導体サイズが大きくなるほど電気抵抗が小さくなり、許容電流も大きくなります。

③ 基準となる許容電流を確認する

使用する電線・ケーブルと導体サイズが決まったら、適用する規程・規格・メーカー技術資料などから基準となる許容電流を確認します。

このとき、許容電流の数値だけでなく、その表がどの施工条件・周囲温度を基準としているのかも確認します。

④ 施工方法を確認する

次に、実際の施工方法を確認します。

たとえば、

管内

空中

ケーブルラック

ダクト

地中

などです。

同じ電線・ケーブルでも施工方法によって放熱条件が変わるため、許容電流が変わる場合があります。

⑤ 周囲温度を確認する

許容電流表の基準周囲温度と、実際に電線・ケーブルを使用する場所の周囲温度を確認します。

実際の周囲温度が基準周囲温度より高い場合には、温度補正が必要になることがあります。

⑥ 電線数・多条布設などを確認する

同一管内に収める電線数や、ケーブルの条数、配列などを確認します。

電線・ケーブルが密集するほど熱が逃げにくくなるため、必要に応じて補正を行います。

⑦ 必要な補正を行う

最後に、

周囲温度による補正

電線数による補正

多条布設による補正

その他の施工条件による補正

など、適用する規程・規格・技術資料に従って必要な補正を行います。

これによって、実際の施工条件に応じた許容電流を判断します。

許容電流・負荷電流・ブレーカーの違い

許容電流を理解するときに、負荷電流やブレーカーの定格電流と混同しないことも重要です。

それぞれの役割を簡単に整理すると、次のようになります。

負荷電流
実際に接続する設備や機器が必要とする電流です。
許容電流
電線・ケーブルに安全に連続して流すことができる電流の上限です。
ブレーカー
電線や回路を過電流などから保護するための機器です。

実際の幹線・分岐回路設計では、これらをそれぞれ確認しながら、電線サイズや過電流保護器を選定します。

さらに、配線距離が長くなる場合には電圧降下も確認する必要があります。

つまり、

「許容電流を満たしている=電線選定がすべて完了」

ではありません。

まとめ|許容電流は「電線がどこまで熱くなるか」で考える

許容電流を理解するうえで最も重要なのは、単純に「○sqなら○A」と数値を暗記するのではなく、電線・ケーブルの発熱と放熱をイメージすることです。

基本的な流れは、

電流が流れる

↓

導体が発熱する

↓

電線・ケーブルの温度が上昇する

↓

絶縁体には耐えられる温度の上限がある

↓

周囲温度が高ければ、温度上昇できる余裕が小さくなる

↓

管内・多条布設などで熱が逃げにくければ、さらに条件が厳しくなる

↓

その条件で安全に連続して流せる電流が「許容電流」

と考えると分かりやすくなります。

特に重要なのが、

「導体の最高許容温度」と「周囲温度」は別物

ということです。

さらに、許容電流は、

導体サイズだけではなく、電線・ケーブルの種類、絶縁体、周囲温度、施工方法、電線数・条数などを含めて判断する

必要があります。

許容電流表に記載されている数値も、すべての施工環境でそのまま使用できる万能な数値ではありません。

実際に電線・ケーブルを選定・施工する場合には、この記事の内容や代表値だけで判断せず、最新の法令・規格・内線規程・JCS・メーカーの仕様書や技術資料などを確認し、実際の施工条件に応じて選定してください。

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